はじめて『わたしを空腹にしないほうがいい』という本を出して以降、これまで、読者の皆様からのたくさんの読書カードやお手紙にたくさん励まされてきました。みなさんのご感想も、ご自身の話をお聞かせいただけることも本当にうれしく思っています。やっぱり筆圧のあるメッセージはいいなあ、と読むたびに思います。本当に、皆さんが思っているその何倍も何倍も、アナログなお便りをいただけると元気が出ます。

いままで「全部にお返事します!」と言い、ゆっくりながらもなるべく皆さんのお便りにお返事をしてきました。ありがたいことにさまざまな出版社さんから本を出していただく機会に恵まれてきて、正直なところ、すべてのお便りにお返事を書くことが難しくなっています。本を出すたびに読者カードを書いてくださる方も多くいらっしゃり、もしかしてお返事を期待されているかも、と思うと心苦しく、改めてわたしとお便りに関する今の状況をお知らせしておくべきかも、と思ったので「お便りについて」と「手紙にまつわるきもち」をここに書いておきます。本人がこういうことを書くのは粋じゃないのでは……とも思うのですが、もしかすると、わたしだけではなく、ほかの作家さんにメッセージを送りたいと思っている方にもご参考いただけるのではないか、と思って。なので、あくまでわたしの場合、ではありますが、どういう手順でわたしのもとにメッセージが届くのか書いておきます。作家だけでなく、画家、音楽のアーティスト、なにか作品を出している人宛にメッセージを届けるためのすこしでもお手伝いになればうれしいです。

 

基本的に、よっぽど古くからの友人や親戚でない限り、すべてのメッセージは版元(その本を出した出版社)から転送されてきます。もし、直接連絡しうる手段を持っている場合もその作品の発行元にお送りいただくのがいちばんうれしいです。なぜなら、担当編集さんや出版社さんも、作品がどのように届いているか知ることができるととってもうれしいからです。版元に送っていただくことで、わたしだけでなく、わたしの作品を出してくれる版元もうれしいきもちになる。もしかしたらその感想によって、その作家がまたその出版社から何かのチャンスをつかめるかもしれない。一通で二度うれしいってことです。

 

作者に感想を届けるには

・読者カード ・お手紙

の二種類があります。

 

読者カードは、本に挟まっている葉書のことです。ある本とない本がありますが、ある場合はこのカードに書いていただくのが送りやすいのではないかと思います。(わたしも本を買うとこれをなるべく書くようにしています。)どんな人が本を買ってくれて、どう思ったのか、出版社さんにとってとてもありがたい資料にもなります。この読者カードは出版社の個人情報の取り扱いの考え方によって違いますが、そのまま転送していただける場合と、作家本人には住所やお名前を隠して感想だけ届けられる場合とがあり、後者の方が多いです。(わたしがお返事を書くのが難しくなったというのも、このためです。)いずれにせよ、ご感想はかならず作者本人に届きます。葉書のためテキストをかける量はそんなに多くありませんが、そこにぴっちり書いてくださるメッセージはたいへんありがたく、うれしいものです。

 

お手紙の場合は、通常送るような便箋と封筒で、宛先の住所を出版社、宛名を作者名にして送ります。THEファンレター!という感じになりますが、ほぼすべて、中身は念のため先に出版社さんで開封して確認されてから本人に転送されます。この場合は封筒ごと転送されることが多いので、お名前やご住所も把握できることが多いです。こちらも、かならず作者本人に届きます。たいへんありがたく、うれしいものです。

ごくたまに、お手紙以外の品物やお菓子を届けてくださる方もいますが、その分出版社に転送や念のための危険確認のお手数がかかるので、お手紙の封筒に入りきる範囲内のもので、日持ちのするものにすることをお勧めします。(いや!お菓子や小物を貰えるのもうれしいのでほんとうはそう言いたくないけど!でもお金使わせてしまったなと申し訳ない気持ちにもなるから!なるべく、サイン会など直接会えるかもしれないタイミングをおすすめします!)(なかには物はNGなこともあると思うし!)

 

上記の2種類どちらがいいのか、ということについては、どちらもうれしいのでどっちがいいと思うことはありません。これは本当に。思いがあふれた便箋のお手紙も、溢れる気持ちをぐぐっとはがきに収めた読書カードもひとしく有難いです。ご感想はかならず作者本人に届きます、と書きましたが、どちらも必ず出版社の目を通り、万が一攻撃的な内容や本人に見せないほうがいいと判断された場合は届かない場合もあることは、ご承知おきいただけるといいと思います。(たぶん、わたしはいままでそういうことはないと思う)(言われてないだけかもしれない)。それから、確認したり、数通まとまってから転送されたりするため、本人の元まで届くのは半月~1カ月くらいかかると思っていた方がいいと思います。

 

わたしはいままでお返事を書いたりもしていましたが、もちろん全員がそれをする/できるわけではないし、読者さん/ファンの方との関わり方への考え方は人それぞれちがいます。なので、読書カードやお手紙を、返事を期待して送るのはおすすめしません。上記の通り、そもそも住所や名前まで知らされていないのでお返事の書きようがなかったり、お返事を書く余裕がないほど忙しい方もたくさんいます。ただ、お伝えしたいのは、そうして届けてくださるメッセージが、なにかを作る人間にとって、本当に、あなたが思っている以上に、力になることがある。ということです。だから、もしこれを読んでくださったあなたが応援したい人がいれば、一度、お便りを送ってみることをお勧めします。

 

SNSで感想を書いたり、DMで感想を送ったり、という方も多いかもしれませんが、あえてわたしは作者に感想を届ける方法は上記の2種だとお伝えしたいです。@のメンションよりも、筆圧のある感想のほうが、本当に、圧倒的に、力になるからです。敢えて言うならば、SNSで書いたこととおなじことでもいいから、読者カードを届けてもらえたら、作家さんは力になると思います。

SNSの感想にも目を通していたり、リアクションをしてくれる作者さんもいると思います。わたしの場合はある時を境に一切のエゴサーチを辞めていて、通知もすべてオフにしているので、SNSでのメッセージや作品に関する投稿や投稿に対するリプライは見ていません。もちろん、作家業をサポートしてくれているパートナーや友人たちからたくさんの方がポジティブな感想を書いてくださっていることも聞いているし、SNSで大きく話題になることで作品や作者が助かることもあると思います。でも、わたしは生身のからだと名前で作品を書いているので、やっぱり、直筆のメッセージを信じて書き続けるほうがより健康的だと思ってそうしています。

 

読者カードとお手紙は、紙で手元に物質として存在するということが何よりもすばらしいです。わたしはもうおしまいだ……と泣きわめきたくなるような夜に、鳩サブレーの大きくてまっ黄色の缶を開き、そこにふかふかに重なっているメッセージを一通一通読み返しては、こんなにありがたい読者さんに恵まれていて、弱音を吐いていられるか!と復活しています。本当に、ありがとうございます。

 

そんなわけで、もうすべてのお便りに返事を書くことはできませんが、いただいたメッセージはすべて大切に拝読しています。じっくりと読み、お返事を書く時間は本当に豊かで素晴らしいものでした。わたしは4歳の時に、本屋で勤めていたことのある母が「こういう時はお手紙を出すものだ」と教えてくれ、好きな絵本作家さんにお手紙を書いたことがあります。その作家さんからお返事が来た時、本当にうれしかった。おんなじ地球のおんなじ時間にこの人がいるんだ!と思った。その興奮がどうしても忘れられなくて、もしも、わたしが返事を書くことでそんなきもちになる人がいるのなら、と思うと、まさか自分が今度はそんな立場になるとは、と思い、ぐっと込み上げてくる気持ちの中で切手を貼りました。これからも、すべてはむずかしくても、ときどきだけはお返事を書きたいと思っていますし、素敵な作品と出会ったら、わたしもお便りを書く人でありたいと思っています。言葉にすると、伝わるよ!