盛岡で暮らしていて「被災者じゃないのに震災の話をする人」に対して「まじめだねえ」みたいな空気を感じている。きもちはわからなくはないんだけど、でも、ほんとうにそれでいいですか?と、思う。「まじめ」なのかな。

『氷柱の声』を書いてから、作品に書いたことがすべてなのでそれ以上のことを語らないようにしてきた。わたしと作品は別物で、わたしと主人公を過剰に紐づけてほしくなかったからだ。でも、すこし、この作品とわたしを切り離したところで、わたし自身の震災の記憶をだれかに話したいと思っていた。早坂さんとは年の離れた友人としてほんとうにたくさんの会話を重ねてきたし、『氷柱の声』を書いた直後のわたしは瀬尾さんの作品にとても安心した。このふたりとなら、震災の話をするイベントに参加したい、と思った。

このイベントは「まじめなイベント」ではないと思っています。というか、たぶん、そうならないようにできるだけのことをします。岩手に住んでいるみんなで集まって、11年前の各々の日記を交換するような、穏やかで手ざわりのある機会にできたらいいなと思っています。

わたしはむしろ、これまで「震災のイベント」や「震災の本」に対して、「まじめだねえ」と思っていたり、そうは言えないけど内心ちょっとそう思っていたりする、震災のことをどう触ったらいいかわからなくて、なんとなくそのまんまになっている岩手のあなたに、来てほしいです。

 

 

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東日本大震災から11年目を迎えた今年の3月、『10年目の手記 震災体験を書く、読む、編みなおす』が出版されました。 同書は、震災から10年目に、暮らす土地も被災体験も様々な人々の手記を集めたプロジェクト「10年目の手記」から13篇の手記を収録し、アーティストの瀬尾夏美と、社会心理学者の高森順子による「読む」ことをめぐる往復エッセイや、演出家の中村大地による手記を朗読する活動の考察、アーツカウンシル東京の佐藤李青によるプロジェクトの成り立ちについての解説を収録したものです。  今回は本書の出版記念として、著者の瀬尾夏美と、ゲストに、くどうれいんを迎えたトークイベントを開催します。  『10年目の手記』は、震災という大きな災害のなかで「語られてこなかった声」をつぶさに聞き取り、そうした声を拾い、増幅し、可視化すること、そうした語られなかった声を、多くの人へ伝達すべく作られた書籍です。 それは、くどうれいんの小説『氷柱の声』との共通項とも言えるかもしれません。 なぜ、二人は、そのような取り組み(創作や編纂)を行おうと考えたのか?  いっぽうは手記をまとめ、読み、自身の考えを語り、編み直す方法で、もういっぽうは小説という創作によって、彼女たちは社会に対してどんなことを提示したかったのか?  当事者やその周縁にある人たちの思いや声を聞き、書き留め、世に出す先にどんな未来を見ているのか? 書籍にこめた想いを語り、ことばを交わします。

 

日時:2022年4月16日(土) 17:00〜(16:30開場)

場所:岩手県公会堂21号室

参加費:2,500円

✴︎当日、会場受付でお名前を確認いたします。

✴︎今回はオンライン配信はございません。当日会場にお越しになれる方のみが対象となりますので、ご注意くださいますようよろしくお願い致します。